私は親になれない

流産を3回経験し、絶賛『鬱病』闘病中・子なし四十路女の小言。それでも切実に伝えたい事。この日本でも個人での自由な生き方がもっともっと当たり前になりますように.....。

44、抜け出せない

今、お気に入りのドラマが一つある。

話題の、胸キュンドラマ『恋つづ』はまぁ違う意味で楽しみにしている訳だが(あれは女性ホルモン分泌療法ですね。)

深夜帯にやっている

 

『死にたい夜にかぎって』

だ。

原作の本は読んだ事がないから、そこを忠実にしているのかどうかはわからないが、かなり引き込まれる内容で自分にも若干共感できる部分がある作品だ。

 

主演の賀来賢人が元々芝居がうまく雰囲気を作るのが上手な俳優だからというのも大きいと思うが、ものすごく暗くてヘビーな物事をどこかおかしく感じてしまう、そんな面白いドラマ。

 

学生時代に校内で一番の美人だった子によくわからない理由で毎日ビンタを受けた上にそれに『飽きた』と言われ最終的には

 

「君の笑った顔、虫の裏側に似てるよね。カナブンとかの裏側みたい」

 

という尋常じゃない爆弾を投げられてから、うまく笑うことができなくなった主人公。

 

殺伐とした毎日の中、ネット上である女の子と出会い、心を通わせて一緒に住むようにまでなるわけだけど・・・。

その子は顔も可愛いしとびきり明るい。

でも実は「唾を売る」仕事で生計を立て、高校時代から重度の躁鬱病を患ってる子だった。

 

その症状が出てる時も主人公の躁鬱病患者の彼女への対応がまぁ、なんと素晴らしい事。

とまず私はそこに感心してしまった。

自分自身が強固な暗闇くんと対峙してる時にきっとかけられていたら『正解』であった言葉がけをこの主人公が嫌味なく彼女に放つ。

 

それは彼自身が精神的に『苦』を感じる経験をしてきたからできる事なんだろうけど。

 

そんな彼に励まされていくうちに彼女は

 

『減薬していきたい』

と覚悟を決めるのだ。

 

でもその減薬が恐ろしい。

ふと主人公が目を覚ますと彼女に首を絞められてるという日々が続くのだ。それを投げ飛ばしては笑ってそして慰める。

 

これからこのドラマがどう展開していくか非常に見ものだが鬱病やその他の精神疾患病を経験してる人は誰しも共感するであろうこの『減薬』の難しさ。そして恐ろしさ。

 

現在抗うつ剤と安定剤を飲み始めて2年以上になる私は前述したように少しずつ減薬を進めている。

その途中でまた具合が悪くなってはまたふりだしに戻ったり、とそれはもう行ったりきたり一歩進んだと思ったら二歩下がる的なこの半年な訳だが。

そんな中どうしても安定剤が足りなくなってしまった夜があり、

 

「やばい、どうしよう....」

と心で焦ってしまったのだが

 

「抗うつ剤の減薬も今は少し順調だし、この機会だから一日安定剤を抜いてみよう」

 

と思い返すことにした。

そうしたらその夜はもう、とにかくとんでもない夜になってしまった。

 

寝つきもおかしく、ずっと夢と現実の間にいる感じ。パッと目を覚ませば謎の汗だく状態。物音にもいつも以上に敏感でいちいちビクッと体が動いてしまう。夢を見れば変な恐ろしい世界ばかり。気持ちの悪いこの世ではない所でウロウロしてる気分だった。

 

その朝起き上がった時はそれはもう絶不調で最悪の状態。憔悴しまくった。

 

恐ろしい。薬って。

特にこういう類のものは分っちゃいたが恐ろしい。

 

ドラマの彼女のように横に眠る人間の首を締めるまでとはいかないが、たった一日その一錠を抜いただけで一年分くらいの悪夢を脳内で味わったくらいの気持ちになった。

 

否応なく訪れる悲しい出来事や体験によって、こういったメンタル面の病院へかかり薬を飲む事ととなってる人は私が想像してる以上に多くいるだろう。

だけど時にはその薬のおかげで取り戻す事ができる大切なものもある。

げんに私は一番のどん底にいた時、思い切って心療内科の扉を叩いて良かったと思っている。この薬に救われた。

 

けれど、やはりこの人工的に作られた薬をただただ飲み続ける恐ろしさは、それを抜いてみた時に実感する。

気持ちは違うと思っていても体はしっかりとそこに縛られてその成分が入ってくることを当たり前とし依存症を超えた『それが普通』の状態へしてしまうのだ。

 

薬の恐ろしさに直結しているのはやはり『脳みそ』で、記憶や自己の精神に縛られて動けなくなるように脳みそを調整するその人工的な薬は一歩ひいて考えれば、いや、何度考えても恐ろしいものだ。

 

辛い思いをして薬を飲み、楽になった時に減薬期でまた辛い思いをするなんてなんだか文句さえ言いたくなる。

 

薬と同様人間の脳みそは素晴らしいが故に恐ろしい。

 

いつになったら忘れるだろう。この薬が入る事が当たり前である体を。

そして大事なものを原因もわからず引き離された記憶を。

 

人間の進化の一番の成果が脳みそならば、一番の失敗もその脳みその進化ではないかと思う事が実はよくあるのだ。